小説的表現を含む、ある女の個人的日記1
先日、冬のボーナスをいただいた。
現在社員3名、アルバイト5名のうちの会社は今期で第4期になるのですが、毎年しっかりと黒字を出していて、どんどん売上を伸ばしているらしい。
ミーティングをかねて全従業員が集まったその日、社長の第一声は、私たちに「感謝」している、という言葉からでした。
この不況の折に、順調に売上を伸ばせていることはすごいことで、よく売れるキャッチを考えてくれるのはもちろん、自社オリジナルの商品を開発できたことや、それがことごとく全て(4商品)それなりにヒットさせられたこと、他社から「御社のページが良くできているので、ぜひうちのページも作って下さい」と依頼がくるほど褒められ・また注目されていること、雑誌掲載が当たって注文が増えたこと、顧客対応も発送業務も在庫管理もしっかりきっちりやってくれること、などなど、「もう俺1人の会社ではなくなってきたなと思う。ここまで来れたのもみんなのおかげかなと思っている」と。
社長1人で始まった会社が、私を含む最初のバイト3人を雇ってから、もう3年目。
私はというと、「一番デキの悪い、作業も遅い、電話もとれない、学生バイト」から始まり、今や、「私が作ったページが一番売れ、サイトの重要部分を担い、オリジナル商品の開発を手伝い、全会員に配信するメールマガジンを任されている、社員」になって。
……言葉で表すとなんかすごい人みたいですが、実際のところ、制作チームで一番の古株だし社員も私だけなので、すごい人扱いされています。(そんな器はないが)
その間、何人ものバイトが入れ替わり、社長の奥さんの手を借りずにすむようになり、忘年会や歓送迎会、社員旅行に連れて行って下さったり、……本当にいろんなことがあって。
最初のうちは毎日休みなしで会社に連泊せざるをえなかった社長に、今では週1回の休みをとっていただけるくらいには私たちが出来ること・任されることも増えています。
普段、口では、「会社しんどい」「仕事めんどくさい」「アイデア尽きた」「グレーな商売だ」とは言うけれど、実は私なりにこの仕事を大切に思っていて、苦悩とともにやりがいを感じながら毎日毎日キャッチコピーを生み出してきました。
そしてこの日。
社長の話を聞き、ボーナスを受け取り、さぁ解散かと思った矢先、
「さて、ここでちょっとある人に、特別賞をあげようと思います!」
と、社長が嬉しそうにおっしゃいました。
こういうのって、普通、だいたい前もって勘付いてたりするじゃないですか。
私、まったく知りませんでした。
名前を呼ばれて、
みんなが円になってる真ん中におずおずと、
社長はなんと、後ろ手に表彰状を取り出して、
私の前に。
…
…
読み上げられている間、こんな感覚は久しぶり、いや初めてでした。
大人になって、褒められるって、満たされるというより、刻まれるんですね。
拍手をいただいて、
表彰状を受け取って、
そうしたら今度は金一封が差し出されてあって、、
円の中に戻って、
何か一言どうぞ といわれるので
社長へ感謝とバイトさんへの思いを話すうち、声も体も震えて、息が吸えず、情けなくなるほど格好がつきませんでしたが、「小心者なんです、でも自分なりに考えて勉強してやってきました、みんなにも教えたいこといっぱいあるし、もっといいページを作っていってほしいです。一緒に楽しくやっていきましょう。」と、それだけ、文字通り必死に声を押し出して。
聞き苦しい、痛々しい挨拶になってしまいましたが、なにか伝わっていれば、いいなあ。
そして。
ミーティングが終わり、席について一気に足と腰の力が抜けてしまった私に、社長が「これも副賞」と箱を置いていき…
中を開けると、今人気?とうわさの、「pomera」という手のひらサイズのパソコンでした。
とんでもないサプライズの連続と、また先ほどの緊張の余韻の中で、心底から湧き上がるような達成感を強くぎゅううと噛み締めました。なんだってこんなにすごいことが起こったのか、私は自分で思っていたより社長に評価して頂けていたのかもしれない・などと思うと、ニタァとほくそ笑むような口元が張り付いて、その日は1日その顔を元に戻せませんでした。
おしまい
めずらしく…自慢してみました。
しばらく、私は自分を誇れそうです。
やるじゃん私